オフィスホワイトニングとホームホワイトニング、結局どっちがいい?違いと選び方

診療室で「先生、ホワイトニングって、通うのと自宅でやるのと、どっちがいいんでしょうか」と聞かれない週はほとんどありません。
先日も、娘さんの結婚式を3か月後に控えた60代の患者さんから、まったく同じ質問をいただきました。

はじめまして、歯科医師の大井美智子と申します。
神奈川県の総合歯科医院で30年あまり、一般歯科の診療に携わってきました。

結論から申し上げますと、この質問に「どちらが優れている」という答えはありません。
白くなるまでの速さ、白さの持ちの良さ、通院の手間、そして費用。
何を優先したいかによって、おすすめする方法が変わってきます。

この記事では、2つの方法の仕組みの違いから、費用や期間の目安、選び方の考え方まで、診療室でお話ししている内容をそのまま整理してお伝えします。
ご自分に合うのはどちらか、読み終わるころには見当がついているはずです。

そもそもホワイトニングは歯に何をしているのか

まず、歯の色の話から始めさせてください。
ここを理解しておくと、2つの方法の違いがすんなり頭に入ります。

歯の「着色」と「変色」は別のもの

歯の色が気になるとき、原因は大きく2つに分かれます。

ひとつは、コーヒーや紅茶、赤ワイン、カレーなどの色素が歯の表面に付着した「着色」です。
歯の表面はペリクルという薄いたんぱく質の膜で覆われていて、この膜に色素が絡みついていきます。
壁紙に染みついたヤニのようなもの、と考えていただくとイメージしやすいでしょうか。

もうひとつが、歯そのものの内側の色が濃くなる「変色」です。
加齢によってエナメル質が薄くなり、内側の象牙質の黄色みが透けて見えるようになるのが代表的なパターンです。
日本歯科医師会のテーマパーク8020でも、飲食物による着色と、加齢や薬剤による変色が分けて説明されています。

クリーニングでは落ちない色がある

表面の着色であれば、歯科医院のクリーニング(PMTC)でかなり改善します。
実際、「ホワイトニングをしたい」とお越しになった方の何割かは、クリーニングだけで「これで十分です」とお帰りになります。

けれども、内側から黄ばんできた歯の色は、どれだけ磨いても変わりません。
ここで登場するのがホワイトニングです。

薬剤が色素を分解する仕組み

ホワイトニング剤の主役は、過酸化水素という薬剤です。
これが歯の中で分解されるときに生まれる活性酸素が、色素の分子を細かく切り分けていきます。

色素の分子は、大きいほど濃い色に見える性質があります。
それを細かく分解することで、光が乱反射して白く見えるようになる、という仕組みです。
歯を削ったり、白い塗料を塗ったりしているわけではありません。

オフィスホワイトニングとは

歯科医院で、歯科医師や歯科衛生士が施術するのがオフィスホワイトニングです。

高濃度の薬剤を短時間で使う

使用するのは、過酸化水素を30〜35%程度含む薬剤です。
消毒に使うオキシドールが3%ですから、その10倍前後という濃さになります。

これだけ濃い薬剤を扱えるのは、歯科医師と、その指導のもとにある歯科衛生士だけです。
歯ぐきを保護剤で覆い、光を照射して反応を促し、20〜30分ほど置いて洗い流す。
これを1回の来院で2〜3セット繰り返すのが一般的な流れです。

効果が出るまでの期間と費用の目安

1回の施術でも変化を感じる方が多く、2〜3回通えばご自身でも納得できる白さになるケースがほとんどです。
費用は1回あたり1万円台から、機器や薬剤にこだわった医院では5万円を超えることもあります。
審美目的のホワイトニングは病気の治療にあたらないため、健康保険は使えません。
医院ごとに料金設定が大きく違うのはそのためで、「3回コースでいくら」という総額表示の医院もあれば、1回ごとの精算という医院もあります。
初回のカウンセリングで、何回受けるとおいくらになるのかを必ず確認しておいてください。

知っておいていただきたい弱点

短時間で白くなる反面、色が戻るのも比較的早いという特徴があります。
薬剤の作用が歯の表層に集中しやすいためで、3か月から半年ほどで元の色に近づいていく方が少なくありません。

濃い薬剤を使うぶん、施術中や施術後にしみる症状が出やすいのも正直なところです。
多くは1〜2日で落ち着きますが、ズキズキとした痛みが続く場合は、むし歯や歯のひびなど別の原因が隠れていることもありますので、遠慮なく担当医にご相談ください。

ホームホワイトニングとは

ご自宅で、ご自分のペースで進める方法です。

マウスピースで低濃度の薬剤をじっくり効かせる

歯科医院で歯型を採り、その方専用のマウスピースを作ります。
そこに薬剤を注入して、決められた時間装着する。
これを毎日続けていきます。

使うのは過酸化尿素を10〜21%含む薬剤で、過酸化水素に換算すると3〜7%程度。
オフィスホワイトニングの5分の1以下という穏やかさです。
そのぶん、ゆっくり時間をかけて歯の内側まで薬剤を届かせます。

効果が出るまでの期間と費用の目安

薬剤の種類にもよりますが、1日2時間程度の装着を2週間ほど続けたあたりから、変化を実感される方が多いようです。
就寝中に装着するタイプもあります。

費用はマウスピース製作と薬剤一式で2万円から5万円ほど。
その後の追加ジェルは1本数千円で購入できますので、続けるほど1回あたりの負担は軽くなっていきます。

続けられるかどうかが最大の関門

弱点は、はっきりしています。
面倒くさいのです。

毎晩マウスピースを洗い、薬剤を詰め、装着し、外して、また洗う。
この地味な作業を2週間続けられるかどうかで、結果が決まります。
「3日で挫折しました」と苦笑いされる患者さんも、決して珍しくありません。

比べてみると、選ぶ基準が見えてきます

ここまでの内容を一覧にまとめました。

オフィスホワイトニングホームホワイトニング
場所歯科医院自宅
主な薬剤過酸化水素 30〜35%過酸化尿素 10〜21%
白さを実感するまで1回〜数回(即日から)2週間前後
白さの持続3〜6か月程度半年〜1年程度
費用の目安1回1万〜5万円台一式2万〜5万円
しみやすさ出やすい比較的おだやか
手間通院が必要毎日の自己管理が必要

数字はあくまで目安です。
もともとの歯の色や、生活習慣によって、結果には個人差があります。

期限が決まっているなら、迷わずオフィス

結婚式、成人式、就職の面接、大切な会食。
「この日までに」という締め切りがあるなら、オフィスホワイトニング一択だと考えています。

冒頭でご紹介した患者さんにも、そうお伝えしました。
3か月前からなら、余裕をもって数回に分けられます。

白さを長く保ちたいなら、ホーム

一方、「特に予定はないけれど、写真に写る自分の歯が気になって」という方には、ホームホワイトニングをおすすめすることが多いです。

じっくり時間をかけて内側から作った白さは、後戻りがゆるやかです。
薬剤さえ買い足せば、ご自分のタイミングで追加のケアもできます。

両方を組み合わせる「デュアルホワイトニング」

この2つを併用する方法もあり、デュアルホワイトニングと呼ばれています。
オフィスで一気に明るくしてから、ホームで白さを定着させる。
費用は5万円から10万円ほどと高くなりますが、白さの度合いも持続期間も、単独で行うより優れています。

私自身、患者さんに「予算に余裕があるなら」という前置きつきで、いちばんおすすめしているのはこの方法です。

始める前に確認しておきたいこと

どちらを選ぶにせよ、事前に押さえておいていただきたい点があります。

効果が出ない歯、受けられない方

ホワイトニングの薬剤は、天然の歯にしか効きません。
差し歯や詰め物、被せ物の色は変わらないため、周りの歯だけが白くなって、かえって目立ってしまうことがあります。
人工物の作り替えが必要になるケースもありますので、事前の相談が欠かせません。

次のような方は、施術をお受けいただけない、あるいは慎重な判断が必要です。

  • 無カタラーゼ症の方(過酸化水素を分解できないため禁忌です)
  • 妊娠中・授乳中の方(安全性が確立していないため、通常はお控えいただきます)
  • エナメル質が未成熟な小児
  • 治療していないむし歯や、進行した歯周病がある方
  • 歯に大きなひびが入っている方

抗生物質の影響による変色や、神経を失った歯の変色は、通常のホワイトニングでは改善しにくい場合があります。
こうしたケースには、歯の内側から薬剤を入れるウォーキングブリーチという別の方法もありますので、あきらめる前に一度ご相談ください。

街のホワイトニングサロンとの違い

近年よく見かけるセルフホワイトニングのサロンについても、触れておきます。

高濃度の過酸化水素は劇物に指定されており、歯科医師でなければ扱えません。
サロンで使われているのは、歯の表面の汚れを落とすタイプの薬剤が中心です。
着色を落とすことはできても、歯そのものの色を変える力はありません。

安価で気軽なのは確かですが、目的が違うもの、と理解しておいていただきたいと思います。

「サロンに何度か通ったけれど変わらなかった」とお越しになる方には、その理由をこうご説明しています。
洗剤で洗っても落ちない茶渋を、洗剤の量を増やして落とそうとしているようなものですよ、と。
落とすべきものが違うのですから、回数を重ねても結果は変わりません。

施術前のクリーニングは省略しないでください

表面に汚れが残ったままでは、薬剤が均一に届きません。
まだらな仕上がりを避けるためにも、事前のクリーニングとむし歯のチェックはセットだとお考えください。

歯科医院を探す際は、日本歯科審美学会の認定医・認定歯科衛生士の検索ページも参考になります。

白さを長持ちさせるために

せっかく手に入れた白さです。
できるだけ長くお付き合いいただくためのコツを、3つだけお伝えします。

最初の48時間が勝負です

施術直後の歯は、表面のペリクルが一時的にはがれた状態にあります。
色素を吸い込みやすい、無防備な状態と言い換えてもいいでしょう。

ペリクルが再生するまでの24〜48時間は、コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレー、ソース類など、色の濃いものを控えてください。
喫煙も同様です。
この2日間を乗り切れるかどうかで、その後の持ちがずいぶん変わります。

日々の習慣が積み重なります

着色しやすい飲み物を口にしたら、水で口をすすぐ。
それだけでもずいぶん違います。
ストローを使うのも、地味ながら効果的な工夫です。

歯磨き粉は、研磨剤の少ないものを選んでください。
「白くなる」とうたわれた研磨力の強い製品を使い続けると、エナメル質を傷つけて、かえって着色しやすい表面になってしまいます。

定期的なメンテナンスを

3〜6か月に一度の歯科医院でのクリーニングと、必要に応じた追加のホワイトニングを組み合わせるのが、いちばん現実的な維持の仕方です。
ホームホワイトニング用のマウスピースをお持ちの方なら、数日間の追加ケアで白さを取り戻せます。

まとめ

オフィスホワイトニングとホームホワイトニング、どちらを選ぶか。
判断の軸は、次の3つに整理できます。

  • 締め切りがあるならオフィス、白さの持続を重視するならホーム
  • 通院の時間を確保できるか、毎日の自己管理を続けられるか
  • 予算に余裕があるなら、両方を組み合わせるデュアルという選択肢

30年以上、患者さんのお口を拝見してきて思うのは、歯が白くなった方は、たいてい笑い方が変わるということです。
口元を手で隠さなくなる、と言ったほうが正確かもしれません。

ただ、白い歯は健康な歯があってこそ成り立ちます。
むし歯や歯周病を抱えたままの漂白は、家の土台を放って壁だけ塗り替えるようなもの。
まずはお近くの歯科医院で、お口全体の状態を診てもらうところから始めてみてください。

その相談の場で、この記事の内容が少しでもお役に立てば、これほど嬉しいことはありません。